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巨大盲腸腫瘍

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こんにちは。院長の稲村です。

無精者で….なかなか更新が…..という前置きは省略します(笑)

 

当院は腫瘍の治療を得意としています。

腫瘍の治療は3つの方法が主力選手でおりまして

・外科手術

・化学療法

・放射線療法

他に補助メンバーとして

・支持療法

・免疫療法

・温熱療法

・抗腫瘍サプリメント

などがあります。

 

こういった治療を、どう組み合わせていくかは、

・腫瘍の進行状況

・患者さんの全身状態

・飼い主さんの希望や実施可能な方法

などを考慮して決めていきますが、やはり腫瘍は初期ほど完治しやすいです。

そりゃそうですね。ガンが進行してたら治りにくいし、患者さんの全身状態が悪いと実施できる治療の選択肢が狭まります。まだ腫瘍が健康に影響してなくて、パッと見、元気であれば治療はしやすいです。

体の表面など見えるところにできる腫瘍は数mmでも飼い主さんは気づいて相談してくれます。その時はもちろん患者さんも元気ですから、手術にも充分耐えてくれます。

が、体の中にできる腫瘍はそんな小さい段階で気づくことはあまりなく、進行してから気づくことが多いですね。

だから治療が難しくなります。

なぜなら、

・進行して気づく=腫瘍がでかくなってる

・進行して気づく=患者さんの状態も悪い(だから病院に来てる)

 

先日、腫瘍がかなり大きくなって大手術になりましたが無事に乗り切ったワンちゃんがいました。

手術後の写真ですから、ちょっとしんどそうですね….。でも意識はしっかりしてくれています。

この子は1カ月ほど、覇気がなく食欲も低下してきているとのことでした。

お腹を触っただけで、お腹の中にでっかい塊ができていることがわかりました。

「お腹の中にでっかい塊がある」

この時、僕たち獣医師はある程度の当たりをつけて検査治療に入ります。

その当たりをつけるために大切なのは「動物種」「性別」「年齢」です。

犬、未避妊雌、高齢となると、やはり腫瘍が可能性のトップに来ます。

※これが猫なら?ウサギなら?若い子なら?可能性のトップは全く変わってきます。

じゃぁどこが腫瘍になってるか?が次に大切です。でっかい腫瘍がお腹の中にできてる場合・・・・

・肝臓

・脾臓

・腸

・子宮と卵巣

あたりが可能性の上位に来ますが、治療方法はそれぞれ違います。

そこで、この子はCT検査に進みました。

1枚目のど真ん中、2枚目の左半分、これが腫瘍です。

1枚目は体を唐竹割にして見ています(写真左側が頭側、写真右側がお尻側)。

2枚目は体を横断してみています(写真上が背中側、写真下がお腹側)。

お腹の中いっぱいいっぱいですね。そりゃ重かろうし胃もたれもしそうですね。

CT検査の結果、盲腸腫瘍が一番疑わしいということになりました。

盲腸腫瘍は、ほとんどが悪性です(約90%)。

しかし幸い、明らかな転移は見つからず、まだ手術で治せる見込みがありました。

確かに、ここまでデカくなるまでワンちゃんは元気に生きているわけでして、腫瘍そのものは進行が遅く体への悪影響も少ないのかもしれません。

ものすごく悪い腫瘍ならこんなにでっかくなる前に、体がもたなくなり、腫瘍がもっと小さいうちに動物は具合が悪くなります。

 

盲腸というのは、小腸と大腸の移行部の腸でして、そこがでっかい腫瘍になっていると取るだけじゃだめなんですね。切ってしまった腸を繋げないといけません。

今後のことも考えて避妊手術も一緒に実施しました。

取れた腫瘍がこちら

大きさでいうと直径 20cm くらい、重さは3kg近くありました。

でも無事に手術を終え、退院し、抜糸も終わり元気に走って帰っていきました(笑)

 

病理組織検査の結果は「肉腫」で返ってきました。

皆さんは「癌」と「肉腫」という言葉を聞いたことがあると思います。

両方とも悪性腫瘍を表す言葉ですが、似て非なるものです。

 

・癌:転移しやすい、進行が速い、化学療法が(比較的)効きやすい

・肉腫:転移しにくい、進行が遅い、化学療法が効きにくい、局所再発しやすい

 

これはどういうことかというと、癌の場合は見える本体を切除した後も、見えない微小な転移巣を掃討するために薬での治療を行う必要がある場合がちょいちょいあります。

肉腫の場合は、手術だけで治し切ってしまわないといけないので、腫瘍本体に対しかなり周囲に余裕をもって切除する必要があります(傷がでかくなる)。

幸い今回は周囲への浸潤は少なく、手術のみでの完治ができました。

本当は2年くらいは転移巣が出てこないか(後から転移が大きくなり見つかることもある)経過を追いたいのですが、元気なら中々病院で検査とはいかないことも多いです。

来年の春に、狂犬病注射やフィラリア予防で元気な姿が見れたらそれでいいか、とも思ったりします(笑)

 

今回のように腫瘍が大きくなってからでは手遅れの場合も多々あります。

誰が見ても具合が悪そう、という場合は病気は進行しています。

元気ですよ!という時に初期で見つけて軽いうちに治してしまうのが速いし確実です。

年に1~2回の健康診断は大切ですね。

 

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